恋時雨~恋、ときどき、涙~

順也がついに知ってしまったのだ、と直感した。


もう、歩けないということを。


だから、朝早くからわたしを呼び出したり、静奈を呼んだのだろう。


だから、右手の薬指からリングを外してしまったのだろう。


いつも、どんな時も、肌身離さずにいたペアリングを。


今にも折れてしまいそうな肩に触れようとした時、静奈が勢い良く泣き顔を上げた。


ひどい顔だ。


わたしは、とっさにその手を引っ込めた。


「ごめんね、真央。私のせいだよね」


わたしは、強く首を振った。


〈違う! 静奈のせいじゃない! 誰のせいでも〉


わたしの手話を遮り、静奈はきれいな唇を震わせていた。


「私が、どうにかするから! 絶対、順也を治すから。だから、時間ちょうだい」


静奈の唇は、読み取りやすい。


でも、静奈の言っている事の意味が分からない。


どうにかするって、どうする気なのだろう。


治すって……静奈ひとりの力でどうにかできるわけがないのに。


時間ちょうだいって、どういう意味なんだろうか。