恋時雨~恋、ときどき、涙~

順也が、静奈が、いつも一緒に居てくれるから。


わたしは、幸せ。


次の瞬間、わたしはハッとした。


順也の目に涙がにじんでいたからだ。


「どんなに好きでも、どうしても諦めなきゃいけない時がある」


わたしは、穏やかに凪いだ海のように動く順也の両手から、目が離せなかった。


順也の両手が、泣いているような気がした。


「好きだからこそ、離れる決断をしなきゃいけない時があるんだよ」


わたしには、順也の言っている事の意味がよく分からなかった。


好きなら、離れてはいけないんじゃないだろうか。


好きだからこそ、離れなければいけない時って、一体、どんな時なんだろうか。


〈それは、どんな時?〉


わたしが訊くと、順也が頷いて答えた。


「好きな人の幸せを、祈る時」


好きな人の幸せを……祈る、時。


わたしは、うつ向いた。


脳裏に浮かぶのは、あっけらかんと笑う健ちゃんの顔だった。


八重歯がこぼれる、雨上がりのお日様みたいな笑顔だ。