恋時雨~恋、ときどき、涙~

「焼きそば、好き? おいしいよ。食べてみて」


わたしが、ありがとう、と手話をしてみせると、しおりさんはまた少し表情を曇らせた。


しおりさんも、わたるさんも、同じ目でわたしを見ていた。


その目に悪気がない事は、分かっている。


でも、わたしはやっぱり少しだけ傷付いた。


わたしには分かるのだ。


空気が重くなったのもすぐに分かった。


わたるさんが困った顔をして、順也の肩を抱きながら少し離れて行った。


わたしの心は、深く沈んだ。


昔からこうなのだ。


わたしが手話をするのを初めて見た人は、たいてい同じ顔をする。


どうしよう。


困った。


そんな目をする。


毎回、それが悔しくてたまらない。


唇を噛むわたしに、静奈が慌てた様子で話し掛けてきた。