恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは、健ちゃんの腕を引っ張り、病室に飛び込んでドアを閉めた。


鞄からメモ帳と、残り僅かなインクのボールペンを取り出す。


【大きな声やめて
 ここは病院】


健ちゃんの怖い顔が、一瞬、和らいだ。


「聴こえるのか? 何で、大声って……」


【みんなが見てた
 はずかしい!】


「あ……ごめん」


健ちゃんは都合悪そうに、うつ向いた。


わたしは、溜め息を落とした。


鞄からスマホを取り出し、子うさぎのストラップを外し、健ちゃんの手のひらに押し付けるようにがさつに置いた。


健ちゃんは大きな手のひらを見つめて、左の眉毛を動かす。


「どういう意味? さっぱり、分からんけ」


【返す
 もう いらないから】


たぶん、わたしと健ちゃんは、険悪な雰囲気を放っていたのだと思う。


健ちゃんの後ろで、順也がどぎまぎしながらうろたえていた。


「要らないって……何で」


と健ちゃんが言った。


でも、わたしは何も答えずに、ただ睨み付け続けた。