恋時雨~恋、ときどき、涙~

「先生は、大丈夫って言ってくれるけど。自分の身体は、自分がいちばん良く分かるから」


わたしは、順也の顔を、震える右手で扇いだ。


〈順也?〉


手が、震えっぱなしだった。


〈もし、もう歩けないって言われたら、どうする?〉


順也は考え込む顔で天井を見上げた後、か弱く微笑んで両手を動かした。


「一応、覚悟はしてるけど。その時にならないと、分からないよ。でも、しょうがない事だと思う」


順也は、笑っていた。


車椅子を半回転させ窓の外を見つめる順也に、わたしは声を掛ける事ができない。


外は暗く、瑞々しい夜霧に覆われていた。


黒い窓に、明るい病室と順也が映っている。


順也が、窓に向かって手話を始めた。


「人間は、みんな、孤独と闘って生きてるんだと思うよ。幸せな人も、そうじゃない人も」


順也の手話は、人柄がよく現れている。


「でも、真央は孤独だと思わないで欲しいな」


優しくて、繊細な動きをするから。


「ぼくは、真央のお兄ちゃんだよ。真央の味方だからね」