恋時雨~恋、ときどき、涙~

我慢……。


我慢なんか、していない。


ただ、何から、どう、話したらいいのか分からない。


さっき、亘さんから言われた事が、メビウスの輪にかけられたように、頭の中を駆け巡っていた。


わたしは、話題を反らした。


両手をぎこちなく動かす。


〈順也は、不安になる時、ある?〉


順也が、首を傾げた。


「例えば?」


〈いつか、ひとりぼっちになるんじゃないか、とか。孤独になること、ないの?〉


わたしは、いつも、孤独を恐れて生きてきた。


耳が聴こえない事で、いつか、お父さんとお母さんに捨てられてしまうんじゃないだろうか。


順也や静奈も、いつか愛想を尽かしてしまうんじゃないだろうか、と。


順也がにっこり微笑んだ。


「あるよ。最近は、特に」


その笑顔が、ひどく寂しげに見えた。


順也が、両膝をさすった。


「最近、思うんだ。もう、歩けないんじゃないかって」


わたしは、息を呑んだ。


背筋に冷たい何かが走った。