恋時雨~恋、ときどき、涙~

「ごめん」


順也は両腕に力を込めて、なんとか車椅子に座った。


「ありがとう、真央」


ひと息ついたところで、順也の右手がわたしの前髪に触れた。


「濡れてる。どうして?」


わたしは苦笑いをして〈何でもない〉、と首を振った。


順也はそれ以上しつこく何も訊かずに、ロッカーまで車椅子を走らせ、タオルを引っ張り出した。


そして、わたしをベッドに座るように指示して、タオルで髪の毛と顔についた雨粒を拭いてくれた。


「何か、悲しいことがあったんだね」


どうして、順也には分かってしまうのだろう。


わたしが何も答えずに居ると、順也の大きな手が頭を撫でた。


「雨に濡れて戻って来るなんて。しーとケンカでもした?」


わたしは、笑って首を振った。


〈違う。静奈とは、仲良く別れた〉


「そっか。じゃあ、何があったの? 我慢しないで言って」


ぼくにも言えないような悩みを抱えているのか、と順也は肩をすくめた。