恋時雨~恋、ときどき、涙~

「車で来てるから、家まで送るよ」


と亘さんは言ってくれたけれど、わたしは首を振って霧雨の街に飛び出した。


行きたい場所があるからだ。


可愛らしく制服を着こなした、女子高校生。


帰宅途中の、くたびれ顔のサラリーマン。


これから出勤なのだろう。


テレビや雑誌に出てくるタレントさんのように、きれいな身なりの女の人たち。


スナックのホステスさん。


いろんな人たちが、わたしを見て振り返っていた。


わたしは、両手を動かして、歌った。


小学生の頃、順也が歌って教えてくれた『あめあめ、ふれふれ』。


わたしの心は洞窟のように、暗くて殺風景だった。


駅前に向かって来た時とは、景色が全く違って見える。


霧雨に滲んだ、ビルの明かり。


路地の片隅に置き去りにされた、ごみ袋。


不恰好に潰れた、コーヒーの空き缶。


全部、汚く見える。


夜の匂いがする。


早く、あの人のところへ行かないと。


駅前通りから1本外れた路地裏を歩きながら、わたしは歌い続けた。


あめあめ、ふれふれ。

あめあめ、ふれふれ。


わたし、孤独だ。


わたしは今、ものすごく、ひとりぼっちだ。