恋時雨~恋、ときどき、涙~

静奈が、わたしの脇腹を小突いた。


「ほら、真央」


わたしは慌てて、彼らに頭を下げた。


順也は、わたしの肩に大きな手を乗せながら、ひとりひとりを紹介し始めた。


時計回りに楕円形を描くように、いちばん最初は小柄で可愛らしい女の人だった。


わたしは、順也の口元に集中した。


「さかい、しおり、さん」


順也は手話を使わずに、唇を大きく動かした。


順也の唇は、とても読み取りやすい。


しおりさんは、見るからにおしゃれで、笑顔がとてもやわらかい人だ。


黄色のノースリーブのチュニックに、スキニーのジーンズ。


まるで、春の野原一面を埋め尽くす、菜の花のような笑顔だ。


わたしよりも1つ歳上の19歳で、仙台の美容師専門学校で勉強に励む、学生らしい。


今は夏休みで、地元に帰ってきているのだという。


大粒の瞳。