恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは、健ちゃんにあっかんべーをした。


生意気だんけ、と健ちゃんがわたしを掴まえようとする。


わたしは、もう一度あっかんべーをして、健ちゃんをうまくかわして走った。


後ろに、健ちゃんの気配を感じる。


わたしは楽しくて仕方なかった。


数メートル走った時、ついに追い付かれて腕を掴まれた。


「真央、見ろ」


西の空に、紅い夕陽。


まるで、朝焼けのように神々しい。


その上に架かる、七色の橋。


虹だ。


わたしは、思わず健ちゃんに飛び付いた。


「虹、久しぶりに見たんけ」


健ちゃんは、少し切なそうな目で虹を見つめている。


わたしたちは、どちらからともなく、自然に手を繋いでいた。


「見たこと、ある?」


健ちゃんからの質問に、わたしは首を傾げた。


健ちゃんが虹を指差した。


「虹は、1本だとは限らねんけ。2本の時がある。でな、濃い方の虹に願い事すると」


わたしは早くその続きが知りたくて、急かすように頷いた。