恋時雨~恋、ときどき、涙~

【真央といっしょにいたい】


目の前が滲んで、せっかくの健ちゃんの字がぼやけて見える。


いっしょにいたい。


わたしも、同じことを思った。


だから、頷いて笑った。


そして、ワンピースのポケットから赤ちゃんライオンのストラップを取り出して、健ちゃんに渡した。


「おれに?」


わたしが頷くと、健ちゃんは楽しそうに笑った。


わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。



【わたしも、けんちゃんを、たくさん知りたい
 いっしょにいたい】


わたしと健ちゃんは微笑んで、見つめ合った。


その時だ。


突然、健ちゃんが目を大きく開いて背中を丸め、びっくりしたと言わんばかりに口を開けた。


そして、ずっと向こうの水平線を見つめている。


何?


わたしも見てみたけれど、特に変わった様子はない。


水平線は、不思議な色をしていた。


黒い積乱雲が横にも広がり始め、夕陽を隠そうとしている。


不気味な色の空。


でも、波は相も変わらず穏やかだ。


わたしの鼻がつーんとなった。


塩分をたっぷり含んだ、浜の匂い。


雨が降るかもしれない。


そう、直感した。