恋時雨~恋、ときどき、涙~

園内は、迷路のようだった。


いろんな動物がいる、ジャングルだ。


ジャングルを抜けると『ふれあい広場』というスペースがあった。


どうやら、小動物たちに直接ふれる事ができるらしい。


飼育員さんが、わたしに白うさぎを抱かせてくれた。


白くてふわふわしたやわらかな毛。


たんぽぽの綿毛みたいだ。


ふわふわの体にそっと頬ずりをしてみると、おひさまの匂いがした。


赤い、目。


長い、耳。


わたしは、白うさぎをうらやましいと思った。


これくらい大きな耳なら、どんな音も聴こえるかもしれない。


可愛らしい気配に気付き、顔を上げると、幼い男の子が立っている。


わたしが抱いている白うさぎを、じっと見つめていた。


抱きたいのだろうか。


わたしが、おいで、と手招きをすると、男の子は恥ずかしそうにもじもじしながら、こちらに歩いてきた。


白うさぎが驚いてしまわないようにそっと抱かせてあげると、男の子はにっこりして「かわいいね」と言った。


白うさぎも可愛いけれど、きみはもっと可愛いね、と言ってあげたかった。


男の子は、わたしに、何かを言ったようだった。