恋時雨~恋、ときどき、涙~

美しい、鬣。


鋭く尖った、牙。


つり上がった、強い目。


大きな、身体。


まるで、健ちゃんのような動物だ。


明るいブラウン色で、襟足の長い髪の毛。


鋭いのに、無邪気な笑顔に良く映える八重歯。


つり上がり気味の、奥二重瞼。


すらりとした長身に、広い肩幅。


「おれ、ライオンが好きだんけ」


やっぱり。


わたしは、にこにこしながら頷いた。


突然、健ちゃんが両手を上げて、わたしに大きな口をして覆い被さるジェスチャーをした。


「ガオー」


どうやら、ライオンはガオーと鳴くらしい。


人目もはばからず、堂々とライオンの真似をするなんて。


なんて無邪気な人なのだろう。


笑い転げそうになっているわたしに、健ちゃんが訊いてきた。


「真央は? 好きな動物、何?」


わたしは、メモ帳に【うさぎ】と書いた。


「うさぎ、か。よし、かして。おれが持つんけ」


健ちゃんは、わたしからカゴバッグを奪うと、手を引いて駆け出した。