恋時雨~恋、ときどき、涙~

左手をすぼめて、左手の甲を右手で掻いてみせると、健ちゃんはそれを真似て目を輝かせた。


「きー! きー!」


どうやら、さるの鳴き声を言っているらしい。


さるの手話をしながらはしゃぐ健ちゃんの後ろで、ボスらしきさるが同じような仕草をしている。


わたしは笑って、メモ帳にボールペンを走らせた。


【そっくり】


すると、健ちゃんは後ろのさる山を見て、少しムッとした顔でわたしを睨んだ。


「どこが似てるんけ」


でも、すぐに笑顔になって、わたしの右手を握った。


「手、繋いでもいいですか?」


かしこまって言った健ちゃんに、わたしは笑いながら頷いた。


健ちゃんの手はあたたかくて、心地よかった。


その動物の檻の前に来ると、健ちゃんの様子がえらく変わった。


とても、興味があるらしい。