恋時雨~恋、ときどき、涙~

他の動物を見て回っている途中、健ちゃんが「ここで待ってて」と言い、どこかに行ってしまった。


でも、すぐに戻ってきて、真っ白なソフトクリームをわたしに差し出した。


甘い、バニラビーンズの香りがした。


「ソフトクリーム、食える?」


わたしは、にっこり微笑んだ。


ソフトクリームを食べながらチンパンジーを見ていると、突然、チンパンジーがわたしたちの所に突進してきた。


ガラス張りになっていたけれど、身体の大きなチンパンジーが目と鼻の先に居た。


わたしはびっくりして、後ろによろめいてしまった。


健ちゃんは、わははははと大きな口で爆笑しながら、チンパンジーを指差した。


チンパンジーはわたしを見つめながら、ソフトクリームを舐める真似をしていたのだ。


とても、上手だった。


大きな身体に似合わず、チンパンジーはとてもきれいな瞳をしていた。


そして、さる山を見ていた時だった。


「さる、の手話ある?」


健ちゃんに訊かれ、わたしは頷いた。