恋時雨~恋、ときどき、涙~

数人の男女が大きな鉄板を囲んで、楽しそうにはしゃいでいるようだ。


ああいうのを見ると、わたしは孤独感に打ちのめされる。


生まれつき耳が聴こえないわたしは、彼らとは違う。


住む世界も、見える世界も。


だから、ひどい寂しさに打ちのめされる。


急に、身体が重くなった。


わたしはシートに軽くもたれながら、正面に広がっている海を、フロントガラス越しに眺めた。


目の前には、限り無く広い海がどこまでも繋がっている。


わたしは、シートに身体を沈ませながらスマホの画面をタップした。


17時53分。


わたしは、重い溜め息をこぼした。


早く、家に帰りたい。


運転席側のウインドウは完全に開け放たれてていて、時折、潮風に紛れてこうばしい香りが漂ってきた。


焼きそばのソースが焦げる、食欲をそそる匂い。