恋時雨~恋、ときどき、涙~

雨に濡れて、きらりと輝く。


ひまわりの髪飾りだった。


「お前、これ、わざとだろ」


さて。


〈何のこと?〉


「とぼけやがって。わざと置いてっただろ」


ばれちゃった。


確かに、わざとだ。


2年前、わざと、健ちゃんのとこに忘れて来たのだ。


わたしの事を、忘れたりしないように。


必ず、迎えに来てくれるように。


早く迎えに来てください、というメッセージのつもりだった。


だって、そうでしょう。


ガラスの靴を落として行ったシンデレラは、探しに来てくれた王子様と幸せになるのだ。


〈そうだよ。わざと、落として来たの。来てもらえなかったら、嫌だから〉


やっぱりな、と健ちゃんが笑う。


「だんけ、探しに来た」


と言った直後、いや、と前言を撤回。


「真央、っていう、おれのいちばん、大切な人を」


と、わたしを指さした。


「迎えに、来た」


今日は、雨が降っている。


気付けばいつも、降っている。


雨が、降っている。


雨が、わたしたちを繋ぎ止めてくれたのかも分からない。


いつも、雨で繋がっている恋だった。


「迎えに、来ました」