恋時雨~恋、ときどき、涙~

成長しただろ、と健ちゃんは得意げにポーズをとる。


「それだけじゃない。2年もかかったけど、ちゃんと、承諾してもらった」


健ちゃんが、人差し指で頬をなぞり、親指を立てる。


「父ちゃんと」


人差し指で頬をなぞり、小指を立てる。


「母ちゃんに」


そして、わたしを指さした。


「真央と一緒になること。やっと、分かってもらえた」


と、健ちゃんが笑った。


「それと、さっき、真央の父ちゃんに会って来た。許してもらった。真央の母ちゃんにも、許してもらった」


せっかくの立派な鬣も、雨に濡れて迫力が半減している。


ぺたりと沈んで、なんだかちょっぴり間抜けなライオンさんだ。


「でも、まだ、ひとつだけ。決着のついてないことがある」


健ちゃんが真剣な顔つきになった。


今度は、凛々しいライオンだ。


「まだ、あの返事、聞いてなかった」


ハッとした。


あの、返事。


わたしはエプロンのポケットに手を突っ込んだ。


降りしきる雨の中、健ちゃんは両手と同時に口も一緒に動かし続ける。


「また、雨だ。いつも、雨だんけな。おれたちには、いつも、雨が降るなあ」


わたしはポケットに手を突っ込んだまま、泣きそうになりながら頷いた。


そうだね。


いつも、雨が降るね。


「けどな、真央。もう、何も心配するな」


そう言って、健ちゃんは足元のビニール傘を指で指した。


「もう、傘は、必要ねんけな」


と、今度は灰色の空を指さす。


「おれが、なる。真央に降る雨が、辛くて苦しいものなら、おれが、真央の、傘になる」


胸がぎゅうっと締め付けられた。


「おれが、真央を守る」


わたしは、ポケットの中でそれを握った。


「真央を好きになった日から、ずっと、決めてた事だんけ。この人だけは、おれが守るんだって。決めてたんけ」


そう言ったあと、健ちゃんがおもむろにジーンズのポケットから何かを取り出した。