恋時雨~恋、ときどき、涙~

そんなふうに言われると、ますます不安が膨らむ。


痛い箇所を、突かれてしまった。


本当に、いつになるのだろう。


本当に、迎えに来てくれるのだろうか。


来てくれないかもしれない。


来ない、かもしれない。


急に虚しさにかられ背中を丸めていると、


「ちょっと!」


とすごい迫力の真千子さんが厨房にずかずかと乗り込んで来た。


その迫力はかなりのもので、わたしは思わず後ずさりしてしまった。


「そういう言い方はないんでないの」


そして、店長の背中に手にしていた布巾を投げつけた。


それでも、店長は涼しい顔で無視をする。


「ごめんね。真央ちゃん」


ころりと表情を変えて、真千子さんが大きな口で話しかけてくる。


「秀一は、デリカシーがないんだ。女の気持ち、全然分かんねえ、ただのおじさんだ」


わたしはつい、笑ってしまった。


「きっと、来てくれるって。彼氏」


ぽん、と真千子さんがわたしの肩を弾く。


「信じるものは、救われる、ってよく言うべ」


そうかな。


【ほんとうは不安
 店長のいう通りかもしれない】


メモ帳を見せると、真千子さんは「なして?」とあっけらかんと笑った。


そして、こう言った。


「私は、信じてんだ」


すると、店長が割って入って来て、無愛想に言った。


「真千子が信じても、どうにもなんないべ」


「なして! なしてよ!」


真千子さんがずいっと店長に詰め寄る。


わたしの心はわくわくし始める。


ふたりの口の動きを交互に読み取る。


これが、少し、楽しい。