恋時雨~恋、ときどき、涙~

健ちゃんと目が合った。


その、熱っぽい目つきに、心臓が飛び跳ねた、次の瞬間。


突然、いや、唐突、だった。


健ちゃんが大きな体を折り紙のようにふたつに畳むようにして、濡れた砂の上に手をついた。


そして、うずくまるように小さくなった。


具合が悪くなったのかと心配になってその背中に触れて、わたしはすぐに手を引っ込めた。


健ちゃんは大きな背中を、荒れ狂った水面のように波打たせて、何かを吐き出すように大きく大きく呼吸を繰り返していた。


大きな体を、小刻みに震わせながら。


泣いているのかと思ったけれど、そうではなかった。


胸いっぱいにため込んでいた何かをわあっと吐き出すように、激しく呼吸を繰り返している。


まるで過呼吸を起こしているような、激しい息使いだった。


その身を削るような荒々しい呼吸の仕方に、わたしはただ見つめていた。


どうすればいいのか、分からなかった。


でも、このまま放っておいたらこの人が本当に壊れてしまう気がして、怖くて、わたしは彼の体を抱え起こした。


恐ろしくなった。


健ちゃんは我を失ったように、青白い顔をしていた。


怖くて、不安で、だけど、どうすればいいのかも分からなくて、わたしは夢中で健ちゃんを抱きしめていた。


どうしたの。


何が起きているの。


私の腕の中で震える彼は、体の奥底から何かを絞り出すように激しい呼吸を繰り返した。


どうしよう。


どうすればいいの。


わたしはどうして、何もできないのだろう。


他に、何も思いつかなかった。


そうする他に、何ができたというのだろう。


わたしは波打つ大きな背中を、必死にさすり続けた。


ごめんね。


ごめんね。


こんなことしかしてあげられなくて。


いつも、いつも、ごめんなさい。


苦しそうに呼吸を繰り返す間じゅうずっと、背中をさすりつづけた。


しばらく激しい呼吸が続き、次第に深い呼吸に変わって、それもいつしか落ち着いて、やがては穏やかになった。