恋時雨~恋、ときどき、涙~

胸が燃えるように熱くなった。


もうすっかり、180度、変わってしまったんだと思っていた。


でも、やっぱり、この人は、健ちゃんで。


何も変わってなんかいない。


優しいところは、何も変わっていない。


健ちゃんがわたしを離して、肩を叩く。


《怪我は?》


ない。


わたしは首を振って、ひどく咳き込んだ。


健ちゃんが、わたしの背中をさする。


《大丈夫か?》


と聞いてくる彼もまた、肩を上下させるほど、ひどく咳き込んでいる。


健ちゃんは、何も変わってなんかない。


だって、こんなに、優しいんだもの。


《怪我、してないんだな? 本当だな?》


わたしは頷きながら、奥歯を強く噛んだ。


泣いてしまいそうだ。


波にのまれても、それでも、健ちゃんはその手にしっかりとメッセージカードを握っていた。


ほら。


やっぱり。


健ちゃんは、健ちゃんだ。


わたしの大好きな、ライオンだ。


確かに、氷のように冷たい色の目をしている。


確かに、笑ってはくれない。


でも、押し寄せた波からわたしを守ってくれたそのひだまりのような優しさは、何も変わっていない。


本当に泣けて来る。


わたしたち、ばかみたいだね。


わたしは咳き込む彼の頭に手を伸ばし、髪に絡まっている海藻を取って、胸いっぱいに酸素を吸い込んだ。


今なら、できそうな気がした。


届くかな。


届くと、いいな。


メッセージカードを握る手とは逆の手を掴み、


〈きこえる?〉


わたしは、健ちゃんの手のひらを自分の喉に当てた。


口を開いてみる。


健ちゃんはぽかんとして、わたしの口元を見つめている。