恋時雨~恋、ときどき、涙~

苦しい、のかな。


痛い、のかもしれない。


健ちゃんの瞳に、泣き顔のわたしが映り込んでいる。


黒い鏡を見ているようだ。


健ちゃんの瞳孔は、黒真珠みたいだ。


漆黒の宝石に、降り注ぐ陽の光が、ゆらゆら踊るように揺れている。


わたしは、彼の胸に手のひらを当て続けた。


〈今も、居る? ここに〉


震えていたのはわたしで、


〈わたしが、居る?〉


泣いているのもまた、わたしだった。


真っ黒な瞳が、ゆらりと動いた。


《居るよ》


と健ちゃんは頷き、自分の左胸を人差し指で突いた。


《ここから、きみが居なくなった日は、一日もない。3年間ずっと居る。そして、今も》


笑ってるんだ、と健ちゃんは困ったように肩をすくめた。


喉の奥から膨大な感情が唐突に突き上がって来て、


〈ごめんなさい〉


ついにこらえきれなくなって、わたしはうつむいた。


〈わたしは、あなたを……苦しめてばかり……〉


止めようと必死になればなるほど、反抗するかのように涙はあふれて、海水と同化していった。


悔しくて、やるせなくて、泣けて泣けて、どうにもできない。


この人を苦しめているのは、わたしだ。


そう思うと悔しくて、体がばらばらになりそうだった。


しばらくした時、ふと、頬に冷たいものが触れた。


顔を上げると、健ちゃんが手を伸ばして、わたしの頬に触れているのだった。


《なぜ、きみが泣く? 泣く必要はないのに》


手話をする彼の胸に手を伸ばして、もう一度手のひらを押し当て、わたしは泣きながら謝った。


〈ごめんなさい〉