恋時雨~恋、ときどき、涙~

さっきは、その意味が分からなかった。


だけど、今、分かった気がする。


わたし、こんな耳だから、声を聞くことはできないけれど。


でも、わたしには手がある。


こうして触れれば、感じる事ができる。


、、、。


はっとした。


何かが、手のひらに触れた。


、、、。


これ、どんな音?


手のひらに、健ちゃんの鼓動が響いてくる。


、、、。


安定した、一切乱れのない一定のリズムが、わたしの手のひらを打った。


おそらく、これが、健ちゃんの心の声、なのだと思う。


、、、。


手のひらに触れる仄かな振動に、耳を澄ませてみる。


やっぱり……聞こえないや。


肩をすくませて見せたわたしに、


《何?》


と健ちゃんは首を傾げた。


〈心の、声〉


1テンポ遅れて、健ちゃんが繰り返す。


《心の、声?》


わたしは頷いた。


〈健ちゃんの心の声、聞きたくて〉


無表情のはずの彼が眉をひそめる。


《何、ばかな事》


と、健ちゃんは怒るような仕草で、わたしの顔を扇いだ。


《きみに。耳が聞こえないきみに、そんな事できるわけない》


手のひらに触れていた振動が、ばらばらに散らばるように乱れ始めた。


わたしは、もっと強く、彼の胸に手のひらを押し当てた。


、、。


、、、。


、。


、、。


ひどい乱れ様だ。


と同時に、健ちゃんの息づかいも荒くなった。