恋時雨~恋、ときどき、涙~

《晴れの日、曇りの日……それから》


健ちゃんが言葉を詰まらせる。


《それから……雨の日は、特に》


雨……。


わたしは慎重に息を飲み込んだ。


健ちゃんが、自分の左胸を押え付ける。


《ここに、きみが居る。雨宿りをしに来るんだ。それで、雨が上がっても、出て行こうとしない》


外はとても良い天気なのに、と健ちゃんは肩をすくめた。


《どうすれば、何をすれば、ここから出て行ってくれる?》


と健ちゃんが聞いて来た。


そして、どうすれば二度と戻らないのか、とも。


わたしは、何も返す事ができなかった。


《もう、限界なんだ。教えてくれないか》


一心不乱に、訴えかけるように両手を動かし続ける彼を見ていると、たまらなくなった。


今にも夕日に透けて消えてしまいそうなほど、儚く切なげな表情に、胸を引き千切られる思いだった。


目の前にあるその体がばらばらになって壊れてしまうのではないかと、不安になる。


健ちゃんは肩を上下させながら言った。


《疲れた》


その一言に、わたしは固まる他なかった。


《もう、本当に、疲れた》


3年前は生き生きしていたのに、今はまるで病人みたいに色艶の悪い肌。


《3年間、きみを追い出し続けて、生きて来た。毎日。もう、歩くのもしんどいくらいへとへとだ》


まくし立てるように動いていた彼の手が、


《それなのに、何度追い出しても、きみは平気な顔して、戻って来る》


だんだん呼吸が弱くなって行くように、寿命を間近にした蛍の光のように、動きが鈍くなって行く。


《……疲れたんだ……つかれ……》


そこまでを見て、わたしは、彼の震える手を両手で包み、首を振った。


もう、いい。