恋時雨~恋、ときどき、涙~

まるで、ひだまりの中に居るような、ノスタルジックな感覚に陥った。


わたしは手のひらを見つめたあと、返って来たばかりの心を、そっと胸にしまいこんだ。


健ちゃんと目が合う。


わたしは涙を拭いて、無理やり笑顔を作った。


〈ごめんね〉


健ちゃんが瞬きをした。


〈わたし、本当は、自信がない〉


さっきは、あんなふうに言ったくせに。


本当は、自信なんてない。


本当に、嫌になる。


矛盾だらけの自分に、嫌気がさす。


〈あなたを、忘れる自信がない〉


だけど、心を返してもらった以上、努力してみます。


〈でも、頑張ります。あなたを、できるだけ早く忘れられるように。そうしたら、楽になる?〉


どうすれば、あなたの心は楽になる?


どうしたら。


〈あなたは楽になれる? また、あの頃のように、笑ってくれる?〉


すると、健ちゃんはどこか困ったような様子で、肩を落とした。


《分からない》


でも、と健ちゃんは飛び付くようあ勢いで両手を動かし始めた。


《ひとつだけ、方法がある》


うん。


わたしは頷いた。


覚悟を、した。


この人が、もう一度、屈託のない顔で、あっけらかんと、大きな口を開けて、ライオンのように笑ってくれるのなら、と。


わたしにできることは何でもしよう、と。


その、一瞬の出来事だった。


ふわりと膨らんだ風が、ぴたりとたんだ、その一瞬だった。