恋時雨~恋、ときどき、涙~

短命な、でも、煽るような一瞬の風が吹いた。


まるで、人間の手に押されたような感覚が背中に触った。


わたしは、弾かれたように後ろを振り返った。


『腹をくくった女は怖いもんなしやで』と幸の言葉がよみがえる。


水面が、乱反射していた。


水面の上で、夕日が乱舞している。


また、同じ後悔を繰り返すつもりなの?


ばかばかしい。


もう、たくさん。


もう、うんざり。


水面を渡って来た風が、わたしを吹き飛ばすように、強烈に走り去った。


そうか。


これが最後だというのなら、怖いものなんてない。


もう、これ以上のものを失うことはないと思う。


わたしは、遠ざかる後姿を見つめた。


どうせ、わたしの人生は最初からこうだ。


失う事から、わたしの人生は始まったのだから。


始めから、恐れることなどない。


ひまわりの髪飾りを、きつく、きつく握りしめる。


いっそ、とことん嫌われてしまおうか。


もう、二度と顔も見たくない、そう思われるくらいに。


嫌われたって、いい。


平気。


それでも、かまわない。


怒鳴る事ができない分、わたしは態度で示すことしかできないけれど。


それでも、何もせずにのこのこ東京へ帰るより、ましだ。


今日、ここで。


わたしたちが出逢ったこの、美岬海岸で。


長かった、不器用過ぎた、でも、誰にも負けない、時雨のような、恋。


始まった場所で、終わりにしよう。


わたしは、弾かれるように駆け出した。