恋時雨~恋、ときどき、涙~

順也は傷だらけの顔で、都合悪そうに真っ赤になって窓の外に視線を飛ばした。


わたしは、笑わずにはいられなかった。


可笑しくて、可笑しくて、嬉しかった。


わたしが静かに肩を叩くと、順也が振り向いた。


「何?」


〈順也って、実はやきもちやきだったんだね〉


わたしの悪戯な手話を見て、順也は照れくさそうに笑った。


「まあね。ぼく、真央は妹だと思ってるから」


嬉しくて、わたしは微笑んだ。


順也と話しているわたしの肩を、静奈が叩いた。


静奈は病室の入り口を指差して、にやにやしていた。


振り向くと、病室に健ちゃんが入ってきた。


どうやら、仕事のお昼休みに抜け出して来たらしい。


だぼだぼした作業着に、頭にタオルを巻いた姿だった。


右手に、何やら重たそうな紙袋をぶら下げている。


健ちゃんはいつも風を連れて来る。


開け放たれた窓から、暑い熱を含んだ風が入ってきた。


その風に揺れるオフホワイト色のカーテンが、オーロラのようになびいた。