「あら、じゃあ花火…」 「紫ちゃんは先生と一緒に見たらいいわ。私はまた、去年みたいに長屋の皆と見るから」 紫が反射的に市哉を見ると、市哉もやはり紫を見ていた。 目が合っただけで、紫の心臓の鼓動が速くなる。 顔がまだ、火照っていた。 慌てて目をそらすと、市哉は一瞬間を置いて、 「僕が責任持って、紫ちゃんを送り届けるよ」 と言いながら、幸子をそっと下ろした。 「御機嫌よう」 そうして、房子は幸子を抱いて、帰って行った。