紫は、人々の邪魔にならないように参道の脇によけた。 市哉の背中が人混みに消えて行く。 (さっきの言葉…) さっき市哉が言った、 『来てくれるだけでいい』 の言葉を、信じたい。 精神治療でもない、気分転換でもない。 ただ、市哉に会うために、あの家に行きたい― 紫は、左手の中で勇ましく天に昇ろうとする竜の飴を見つめた。 その凛々しい姿は、紫を勇気付けてくれるようだった。