「食欲を失う、が聞いて呆れるわ」 「失いそうだ、と言ったんだよ。間違えてもらっちゃ困るな」 市哉の視線は、まだ食べ物の屋台を探している。 (屁理屈ばっかり) そう思いながらも、紫はそんなやり取りを楽しんでいた。 最近はすっかり川端家から遠のいている紫だが、今日を機に、また接点を持つことができたら― (房子さんがいなくなっても、生活に張り合いが出るかしら…)