両親の死後、身辺が落ち着くと、ようやく紫に生活の余裕が出てきた。



ところが、いざひとり暮らしを始めると、思いのほか気落ちしている。



何もする気が起こらず、紫はどんどん痩せていった。



紫が、川端家に顔を出すようになったのは、そんなある日のことだ。



紫の様子を見兼ねた市哉が、



「うちに気分転換に来るといい」



と、精神治療も兼ねて自宅へ誘ったのがきっかけだった。