―そのときの和哉の敏速な行動に、自分がいかに勇気付けられたか。



結果として両親の病気が治ることはなかった。



それでも紫は、今でもこのときのことを思い出すと、和哉に感謝せずにはいられない。







「紫ちゃん、家まで案内して」



「はい」



ほとんど小走りで、重そうな医者鞄を持った和哉の前を歩く。



正面から冷たい風が容赦なく吹き付けて、紫は耳がちぎれそうだと思った。



「この角を曲がれば、もうすぐです」



そう和哉に告げて、角を折れたそのとき―