「素敵な絵…」



画家の名前なんて、もちろん知らない。



油絵なのか水彩なのか、それすらも、紫にはよくわからなかった。



それでも、両手を広げたほどの大きな風景画は、見る者の気持ちを引き寄せる何かを持っているようだ。



明るい緑と深い緑で全体が彩られ、近くで見ると、まるで森の中に迷い込んだように感じる。



木々の間から差し込んだ太陽の光が、絵の具の色とわかっているのに眩しいのが、不思議だった。



やがて、紫がその絵に魅せられていると、後ろで扉を開ける音がした。