しばらく待って玄関の扉が開く。



最初に応対してくれたのは、住み込みで医院を手伝っている雪乃という女性だった。



雪乃は昔、紫の住む長屋の近くに、家族と住んでいた。



紫とは十五も歳が離れているが、幼い頃にはよく遊んでもらった。



まだ房子が長屋に来るずっと前の話だ。



やがて雪乃が川端医院の長男、和哉に嫁ぐと、



「とんだ玉の輿だ」



と町内が大騒ぎになったものだ。