手をつないで、ほんの少し歩きかけたところで、後ろから、幸子、と呼ぶ声がした。 ふたりは立ち止まって、声のほうを向いた。 そこには、幸子の母親が立っていた。 「房子さん、こんばんは」 「こんばんは、紫ちゃん」 房子、と呼ばれた女性は、幸子のそれより少し色の薄い浴衣を身にまとっていた。 片手に団扇を持って、髪を結い上げて、その姿はとても美しい。