顔を上げると、市哉はいつの間にか紫の隣に立っていた。



心配そうに紫の顔を覗き込んでいる。



紫は、あわてて笑顔を作ると、



「あ…ごめんなさい。なんでもないの」



と、明るく振舞った。



「…僕でよければ、相談に乗るよ」



「本当に、大丈夫よ」



「……」



市哉は、小さく頷いて、誰もいなくなった石段に腰を下ろした。