市哉とこんなにゆっくり話すのは、久しぶりだ。 (この貴重な時間を与えてくれた縁日に、感謝しなくては) と、紫は市哉の笑顔を見て、思った。 気がつくと、ふたりは神社の裏口にあたる石段まで歩いて来ていた。 この辺りまで来ると屋台もまばらで、人も少ない。 紫は、久しぶりの新鮮な空気を、すぅっと吸い込んだ。 「ふぅ、やっとひと心地ついたわ」