「あそこにしゃがんでる、坊主頭の男の子、わかるかい?」 紫は、市哉が指差すほうを見た。 人々が行き交う参道に背を向けて、ヒヨコに夢中になっている子供たち。 坊主頭はひとりだけだった。 「ええ、わかるわ」 「あの子、ぜんそく持ちなんだ」 市哉は、視線を坊主頭に向けたまま、言った。