「…さっきの金魚だね」 市哉が目を細めて微笑んだ。 「見ていたの?」 「すぐ後ろにいたんだよ。紫ちゃん、気づいてくれないんだもんな」 「そうなの?全然わからなかったわ」 今日の市哉は、なんだか別人のように思えた。 それはきっと、普段の見慣れた白衣ではなく、浴衣を着ていたせいに違いない。 気づかないのも、無理はなかった。