「これなんか、どう」 市哉は、まるで幸子の浴衣のような空色に色づけされた風鈴を手にとって、紫に見せた。 そのとき、ようやく、 「いらっしゃい!」 と風鈴屋の主人が身を乗り出してきた。 「どれもいい音だよ。ぜひ、買っていっておくれ」 さっきまでとは打って変わって、ずいぶんな元気だ。