風鈴の屋台の前にはあまり人がいなかった。 人気がないのか、主人もどことなく暇を持て余しているようだ。 紫は、その屋台に近づいて、風鈴を手にとって眺めた。 主人は冷やかしだと決め付けているようで、「いらっしゃい」すら言わない。 別に構わないけれど、あまり気持ちのいいものではなかった。 少し気まずさを感じて、立ち去ろうと思った、そのとき― 「どれがいいの。買ってあげるよ」 と、後ろから、声がした。