紫は、房子と一緒に幸子を追いかけようか迷ったが、そうしなかった。 狭い神社の中だ。 幸子が迷子になることもないだろうし、またすぐに落ち合えるだろう。 房子の背中が人混みに紛れて見えなくなるのを見届けると、紫はゆっくり歩き始めた。 少し歩いたところに、飴細工を売る屋台があった。 主人が器用な手つきで、飴を溶かしては練って、動物や花を形作っている。 その職人技に、思わず立ち止まった。