「ああ、やぶれた」



水槽を囲む大人たちから、あ~、という声が漏れる。



的屋の主人の声に、紫が幸子を上から覗き込んでみると、ポイがやぶれていた。



小さな背中がくるりと振り向いて、



「いっぴきもとれなかったよ!」



と怒ったように、房子に言う。



見ると、片手に持ったお椀には、水が入っているだけだった。



「ボウズだったね、お嬢ちゃん」



的屋の主人は、そう言いながら手際よく金魚を数匹すくって、ビニール袋に入れた。



そして、笑いながら幸子をなだめている房子に、それを渡す。