「私、そんなつもりはないもの」 「そんなこと言ってたらだめよ!これからの時代はね、女から積極的にいかなくちゃ」 「積極的に…」 房子の指摘するとおりの引っ込み思案の紫には、とても無理な注文というものだ。 「いいのよ、私は。ときどきお会いできるだけで、じゅうぶん」 それが紫の本心だった。 この話になると、紫はいつもそうやって切り上げようとする。 房子は、これ以上はなにを言っても無駄だと悟った。