「ああ、はい」 紫は慌てて、市哉の手からそれを受け取った。 また、チリンチリン、と揺れている。 両腕が空いた市哉が幸子をぐいと抱き上げると、きゃははは、と楽しげな笑い声が響いた。 「あらぁ、幸子、先生にご迷惑かけちゃ駄目よ!」 と、挨拶回りから戻って来た房子が言った。 長屋の門の辺りでは、旦那衆が集まっている。 その輪の中心にいる房子の夫も、笑って愛娘の様子を見ていた。