「あっ、おにいちゃん!」 幸子が駆け寄る。 「幸子ちゃん、いよいよ出発だな!」 幸子は縁日の夜以来、すっかり市哉のことがお気に入りになった。 会う度に、市哉の足元にまとわりついて、はしゃいでいる。 (どうか、向こうに行ってもかわいがってくれる人が見つかりますように) 紫は、愛する幸子のために、そっと祈った。