元は、紫の精神治療が目的だった。 紫も、川端家の面々も、そのつもりだった。 それがいつしか、紫は市哉を想うようになった。 このままではいけないと、通うのをやめたというのに― 「房子ちゃんが越してしまうのなら、もう長屋にいてもさみしいだけじゃないか。だったら…」 市哉は、 「長屋を出て、僕と一緒に暮らそう」 と言った。