市哉は、哀しいような切ないような、何とも言い難い笑顔を見せている。 「…市哉さん、どうしたの?」 「いや、ちょっとね」 そして市哉は、紫を促して、もっと空がよく見える場所に並んで立った。 紫は市哉の横顔を見上げてみたが、彼が何を考えているのか、見当もつかなかった。 「ここのほうが、空が広いから見やすいかな」 石段のある裏口を少しそれた、砂利を敷き詰めてある小さな一角。 そこにもすでに何人か先客がいたが、ふたりが花火見物をするだけの余裕はじゅうぶんにあった。