周囲でも、皆が息をひそめて、最初の一発目を待っている。 空は真っ黒で、まるで墨を流し込んだようだ。 早くこの闇を明るく照らす花火が見たい。 「まだかしらね」 紫は、市哉も同じように空を見上げていると思って言った。 ところが、紫が横を見ると、市哉がいない。 「…市哉さん?」 市哉は、一歩下がった位置で、紫の後ろ姿を見ていた。