市哉がこの手をどうするか、紫は気になった。 もし市哉がこのまま離さずにいてくれたら― (自分の気持ちを、きちんと市哉さんに伝えよう) 紫は、曖昧な自分を奮い立たせるように、そう決めた。 すると、また心臓がどきどきして、早足で歩いたからなのか、緊張しているからなのか、自分でもわからなくなった。 (どうか、離さずにいてくれますように…) ―ところが、 「ああ、やっぱりさっきより人が増えてるね」 と石段に座る数人の人たちを見ながら、市哉はさりげなく、手を離した。